杜 いづみ 

黒い犬のクロ 1







ある山のふもとに、クロという名の黒い犬がおりました。

ある日、クロが散歩に出かけた時のことでした。 向こうから白いウサギがやってきました。 ウサギはまぶしいほどにまっ白でした。

「なんて白くてきれいなんだろう。 ぼくときたらまっ黒けできたないし…。 どうしてこんなに黒いんだろう」

クロはウサギにたずねました。
「どうしたらそんなふうに白くなれるかなあ?」

するとウサギがこういいました。
「あたしは雪の日に生まれたの。 だから白いのよ。 雪の日に走り回ったらきっと白くなれるわよ」

クロはウサギにお礼をいうと、うちへ帰って雪がふるのを待つことにしました。

ウサギは、黒い犬だってすてきなのにと思いました。 白いと草の中でも目立つからキツネにねらわれやすいし、よごれたらすぐに洗わなくちゃならないからけっこう大変なのにとも思いました。

ウサギがしばらくいくと、遠くのほうに金色のキツネがあらわれました。 キツネのしっぽは火をともしたように金色にかがやいていました。
ウサギはうっとりと、金色のしっぽに見とれていました。

「なんてきれいなんでしょう。 あたしもあんなふうに光ることができたらいいのに」

ウサギはキツネにつかまらないように、ほんの少し近づいてこういいました。
「どうしたらそんなふうに金色に光ることができるの?」

キツネはウサギにねらいをつけながら答えました。
「毎日朝日をあびるのさ。 顔を出したばかりの朝日は金色にかがやいているからね」

ウサギはそれを聞くといちもくさんに逃げ出しました。 そして明日から早起きをして朝日をあびようと決心しました。

キツネは、とつぜん走り出したウサギをつかまえそこねました。
「あーあ、まじめに答えて損したな。 金色だなんておだてるもんだから…」

がっかりしているキツネの耳もとを、小さなハチがぶーんとかすめて通りすぎました。

(c)moriizumi




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