杜 いづみ 作

ひつじの夢 2






そしてまた次の日も、一日歩いて夜になりました。 その夜は三日月がくっきりと顔を出し、星がたくさん光る明るい夜でした。

メータは、毎晩ひつじを数えるのに少しあきてきました。 そこで、今夜はもうおまじないをやめにして寝ることにしました。


そこへまたやって来たおおかみは、ひつじが寝ているのを見つけて驚きました。 昨日のひつじがいっぴきだけ残っているのはどうしてだろうと思い、ひつじにたずねました。

「ゆうべ99ひきのひつじを食べたやつはいったいどんなやつだい? おまえだけどうして残したんだい?」

メータはやっぱりおまじないをすればよかったと、後悔しました。 雪を見る前に、おおかみに食べられてしまうかと思うとくやしいやら恐ろしいやら…。 そこでメータはぶるぶるふるえながらも、小さな声でこういいました。

「ゆうべの怪物はね、そりゃあ大きくて恐ろしいやつだったよ。 最後にぼくを食べる前にこう聞いたんだ。 おまえの一番怖いものはなんだって。 だからぼくはおおかみだっていったのさ。 そしたらね、おおかみはまだ一度も食べたことがないから、明日の晩おまえをおとりにして食べてみようって…」

全部言い終わらないうちに、おおかみは逃げ出してしまいました。


次の日、メータはようやく山のてっぺんまでやってきました。 夜になると、またおおかみに見つかると大変だと思って、ひつじをたくさん数えて眠りました。

その夜、空から白いものが落ちてきて、あたりいちめん真っ白になりました。 ぐっすり眠っていたメータは、雪がふってきたのも、遠くにおおかみがやって来たのも気がつきませんでした。 おおかみもまた、白い雪の中にいた白いひつじに気がつきませんでした。

よく朝ひつじは寒くて目を覚ましました。
目をこすってあたりを見まわすと、そこはいつもの牧場なのでした。

あたりは真っ白に雪がつもっていました。


おわり


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