杜 いづみ 作

ひつじの夢 1







牧場から見える山のてっぺんに雪が積もりました。

ひつじのメータはまだ雪を見たことがありません。 空から落ちてきて夏の雲のように真っ白な雪は、それはそれはきれいに見えました。
どうしても雪が見たかったメータは、ある日山へ出かけることにしました。

仲間たちが心配して、寝る前におおかみよけのおまじないをするようにといいました。 それは、ひつじの数を数えることでした。
メータは毎晩ひつじを数えてから寝ると約束して、山へ出かけていきました。



メータは山を登り始め、何日も歩き続けました。 日が暮れると、大きな木の下でひつじを数えて眠りました。

ある月のない真っ暗な夜でした。 メータはすぐ近くにおおかみが寝ていることに気がつきませんでした。 いつものようにひつじを数えて寝ようと思いました。

「ひつじが1ぴき、ひつじが2ひき、ひつじが3びき…」

それを聞いておおかみが目を覚ましました。 ひつじがたくさんいると思って大喜びでした。

おおかみは、たくさんのひつじを1ぴき残らず食べるにはどうしたらいいかと考え始めました。 一ぴきを食べれば他のひつじは逃げてしまうし、全部いっぺんには食べられないし…。  考えているうちに、ひつじの数はどんどんふえて、とうとうおおかみはつられて眠ってしまいました。

ところが、メータは100ぴき数えても眠れませんでした。 そのうち東の空がかすかに明るくなったので、あきらめてまた歩き出しました。

昼近くになって目を覚ましたおおかみは、たくさんのひつじを食べそこなったと思ってがっかりしました。 そこで、ひつじのにおいをたよりに後を追うことにしました。



その日歩き疲れたメータは、今日こそはぐっすり眠ろうと木の下に横になりました。 その晩も月は姿を見せず、あたりは真っ暗やみでした。

そこへまたおおかみがすぐ近くまでやってきました。

ゆうべたくさん数えても眠れなかったメータは、こんどはさかさまに数えてみることにしました。
「ひつじが100ぴき、ひつじが99ひき、…」

それを聞いたおおかみは、たくさんのひつじがだんだんへっていくのはなぜだろう? もしかして自分よりもうんと大きなおおかみがいるのかもしれないと思ったのでした。

メータはいくつ数えてもまた眠れませんでした。
「ひつじが5びき、ひつじが4ひき…」
おおかみは青くなって逃げ出したのでした。

メータはようやく眠くなり、その晩は朝までぐっすり眠りました。



(c)moriizumi




続きを読む

TOP